新規事業の立ち上げや事業展開の拡大を考えたとき、ビジネスモデルを立てることは事業成功のための重要なポイントです。しかし、自社はどのようなビジネスモデルで成り立っているのか、詳しく分かっていない方も多いのではないでしょうか。
今回は、ビジネスモデルの基礎知識と、ビジネスモデルを構成する4つの要素を詳しく解説します。代表的なビジネスモデルのパターンも紹介するため、ぜひビジネスモデル作りの参考にしてください。
目次
ビジネスモデルとは、企業が経営活動によって収益を生み出すための設計図です。経営活動の目的は商品を販売して利益を得ることであり、ビジネスモデルも利益を生み出す仕組みに沿って設計図を作成します。経営活動における収益構造を可視化して、成功が持続する事業戦略を考えやすいことが、ビジネスモデルを作る意味と言えるでしょう。
ビジネスモデルは、経営活動を行う会社であれば必ず持っていますが、不変のものではありません。業界全体に技術革新が起きたときや、企業が新分野開拓を狙っているときは、市場の流れに沿って作り直す必要があります。
そのため、新規立ち上げしたベンチャー企業はもちろん、大手・中小企業であっても、ビジネスモデルは定期的に見直しましょう。
新規事業のビジネスモデルを作成する際、どのように構成すれば良いか悩む方もいるでしょう。企業の経営活動をそのまま書き表しても、ビジネスモデルとはなりません。
ビジネスモデルを作るためには、企業の経営活動をWho・What・How・Whyと、4つの重要な要素に分解して考える必要があります。
ここでは、ビジネスモデルを構成する4つの要素について詳しく解説します。
Whoは、自社の商品・サービスを提供する顧客は誰か、という点を明確にします。たとえばコンビニであれば、商品を購入する消費者が顧客です。
ターゲットとなる顧客の性質とニーズの方向性を把握するためにも、まずは次の点を書き出しましょう。
顧客層が複数に分かれている場合は、その全てを記載してください。また、既存の顧客だけでなく、潜在的な顧客についても想定しておくことが大切です。
Whatは、商品・サービスの提供価値を示します。どのような動機から商品を購入するのか、対価を支払う価値は何か、という点を明らかにすることがポイントです。商品情報を丸写しにするのではなく、顧客の立場に立って、商品が提供する価値を考えましょう。
商品・サービスの提供価値は、次の2点に分けて書きましょう。
顧客が従来の製品に抱えていた不満に対して、新しい商品はどのように解消できるかを書き出します。また、新しい商品が従来品にはない付加価値を持っている場合、具体的な効果と、購入者が得られるベネフィットを書き出すことが重要です。
Howは、商品・サービスが顧客に提供されるまでのプロセスを明確にします。商品を用意するところから、顧客の元へ提供するまでを書くこととなるため、記述するスペースは大きく取ってください。
プロセスは、次のように、人・モノ・お金の経営資源と、流通に関係性がある市場環境を書き出します。
プロセスは、顧客に商品を一回提供するための経路だけでなく、顧客がリピーターとなってくれるための手法も盛り込むことが重要です。そのため、リピーター限定のサービスや情報発信、顧客の声を取り入れる方法も記載しましょう。
Whyは、自社がどのプロセスで収益を上げるかを考える項目です。顧客にとってどれだけ価値ある商品・サービスであっても、商品提供による収益がなければ経営は成り立ちません。
収益構造では、次の2点を書きます。
収益の発生するプロセスとコスト額が明らかとなったら、商品の価格を決めます。顧客一人あたりの利益額や、一ヶ月あたりの収益性を考えて価格設定しましょう。
想定した顧客が購入できない価格設定となっていないか、支払いが滞る可能性も検討して、経営が行き詰らないように見直すことが大切です。
ビジネスモデルを作成する際には、まずは基本パターンを把握した上で作成に進むことが重要です。基本パターンと、起業したい会社などの事業形態を把握することで、業種ごとのビジネスモデルを知ることができます。
ここからは、ビジネスモデルの主なパターンを4つ紹介します。
物販パターンは、商品やサービスを製造して顧客に販売する、最もシンプルなビジネスモデルです。企業と顧客は、一対一で商品と対価のやり取りを行います。
物販パターンが該当する主な業種は、次の通りです。
物販パターンのビジネスモデルで成功するためには、その商品が他より優位性を持っていることが求められます。「味がおいしい」「品質が高い」「価格が安い」といった特徴は、顧客が商品を購入する動機となるためです。
商品の提供価値が高いほど成功しやすくなる、分かりやすいビジネスモデルといえます。
卸売パターンは、商品を仕入れて販売するビジネスモデルです。自社で商品を製造することはなく、販売価格と仕入れコストの差額から収益を生み出します。
小売業となる卸売パターンの主な業態は、次の通りです。
卸売パターンの業種で販売しているものは仕入れ商品であるため、他社の卸売店でも同じ商品を取り扱っていることとなります。そのため、商品自体の優位性では競合他社と差別化ができません。
また、卸売パターンで成功するビジネスモデルは、顧客とプロセスを重視します。そのため、ポイント制度や割引などを用意して、顧客がリピーターとして何度もお店を利用したくなるよう、工夫することが必要です。
広告パターンは、人目に触れる場所に広告を掲載し、広告主から支払われる広告料によって収益を得るビジネスモデルです。
広告パターンをビジネスモデルとしている媒体と広告には、次のようなものが挙げられます。
広告は人に見られることが求められるため、広告パターンのビジネスモデルは、プロセスの分析が重要です。自社の媒体を利用している人数と、広告の掲載場所により、顧客である広告主のつきやすさが変わります。
多数の人が閲覧する仕組みを作り、媒体の性質と合った広告主を呼び込むことが、広告パターンで成功するためのコツです。
継続課金パターンは、商品を購入した顧客から、継続的に収益を上げられるビジネスモデルです。顧客一人が一回購入することによる利益率は小さいものの、期間が継続するほどに利益率は高まり、顧客人数が増えると収益の安定性が増します。売上を積み重ねられるビジネスモデルを確立すれば、成功しやすいパターンです。
継続課金パターンの多くは、基本的に月額課金となっています。
継続課金パターンに該当するサービスは、次の通りです。
継続課金パターンの注意点は、長期的に利用してもらわなければ収益を積み重ねられないことです。
現代のサービス商品は流行り廃りが早く、顧客の反応を素早く読み取らなければ、成功が持続できないケースもあります。ビジネスモデルの4つの要素を常に見直し、長期利用してもらえる料金設定や、使い続けたいと思わせる価値提案を続けなければなりません。
ビジネスモデルは、企業が収益を生み出す仕組みを可視化したものです。商品を提供して対価を得るまでの過程は、顧客・提供価値・プロセス・収益構造と4つの要素から成り立っています。構成要素は互いに影響しあっているため、どれか1つが欠けても事業は成り立ちません。
ビジネスモデルには多くのパターンがあります。今回の記事で紹介した4つのパターンはいずれも基本的なものですが、多くの業種で使われているビジネスモデルです。
起業や事業拡大の際にはマーケティングを研究し、自社の事業内容に合致したパターンからビジネスモデルを組み立てましょう。