現代社会において一個人が他人と関わらずに生活するということは、まず不可能と言えるでしょう。他人と良好な関係を築くためには、コミュニケーション能力がとても重要となります。しかし、なかにはコミュニケーション能力に自信がなく、他人との交流に悩みを抱えている人もいるでしょう。
この記事では、コミュニケーションが得意な人と苦手な人の特徴を紹介します。得意な人と苦手な人の特徴を踏まえて、コミュニケーションについて学べる場について知り、コミュニケーション能力の向上・改善を図りましょう。
目次
コミュニケーションとは、言語や表情、声色、ジェスチャー(身振り)などによって、人の考えや感情を共有して理解し合うための行為を指しています。コミュニケーションは「表現して伝える側」と「受け取る側」の相互関係によって成り立つもので、人間同士がお互いのことを知るための手段の一つです。単なる情報伝達の手段ではないという点に注意しましょう。
コミュニケーションの良し悪しは、個人が持つ社会的スキルの高さにもよりますが、コミュニケーションをとる相手への信頼度も大きな要素となっています。
例えば、信頼できる人には何でも話せる一方で、同じ内容でも信頼できない人には話せないという経験をした人も多いでしょう。また同じ内容でも、「相手によって受け止められる時と受け取りがたい時がある」といったケースに遭遇したことがある人もおられるはずです。
このように、良いコミュニケーションには、会話のスキルだけでなく相手との信頼関係が重要となります。コミュニケーションスキルを身に付けるとともに、より早く信頼関係を築くことが、良いコミュニケーションをとるための大きなポイントといえるでしょう。
一般的に、信頼関係を築くためには長い時間が必要です。しかし、社会には採用面接や営業活動、商談など短い時間しか会話ができないシーンも多くあります。
短時間で信頼関係を築き、良いコミュニケーションをとるためには、コミュニケーションを行う上でのコツを掴むことが重要です。
ここから紹介するコミュニケーション能力(コミュ力)が高い人の3つの特徴を把握して、コミュニケーションをとる上で押さえておきたいポイントを確認しましょう。
「学生時代に同じスポーツをしていた」「同じアイドルが好き」「出身地が近い」といった共通点がある人に親近感を覚えた経験がある人も多いのではないでしょうか。そのため、深い信頼関係にある相手とは、好みや行動傾向が似てくることも珍しくありません。
人は自分と共通点や類似点があるものに好感を抱きやすく、安心感を覚えやすいという性質があります。これは「類似性の法則」とよばれるものです。この類似性の法則を利用し、相手に合わせたコミュニケーションをとる技術を「ラポールスキル」といいます。ラポールスキルの代表的な手法は次の2つです。
ミラーリング:相手の動作や表情など、目に見える部分を模倣する
ペーシング:声のボリュームやトーン、スピードを相手に合わせる
コミュニケーション能力が高い人は、上記のようなテクニックをごく自然に行っています。意識しすぎると単に真似しているだけに捉えられることもあるため、注意しましょう。
コミュニケーションというと、「話し方」「伝え方」のように発信側のスキルが重要だと思われがちですが、実は「聞く力」も大切です。
心理学やコーチングの分野では、話を聞くことは「傾聴」と呼ばれており、相手の話したいことを引き出すテクニックとして定義されています。コミュニケーションが得意な人は、以下のようなテクニックを自然と行い、聞き上手であるということも特徴の一つです。
良いコミュニケーションをとるためには、聞き手という役割をきちんと果たし、質問したり共感したりして言いたいことを引き出す傾聴力も重要です。
相槌や頷きで相手が話しやすい空気を作る
コミュニケーション能力が高い人の特徴として、相槌や頷きを適切なタイミングで取り入れていることが挙げられます。
相槌などが無いと、一方的に話しているように感じ、話し手に不安が募っていきますが、適切なタイミングで相槌や頷きがあると、話し手は自分の話に興味を持ってくれていると感じ、相手を信用して話しやすくなるものです。
しかし、傾聴の際には相槌や頷きが必要とは言え、やりすぎるのはもちろん逆効果です。頻繁に行ってしまうと、むしろ話に興味がなく、早く終わらせてほしいと聞き手が思っているのではと話し手は感じてしまうため、相手が気持ち良く話せる頻度で行うことが大切であると言えるでしょう。
相手の話を遮らずに最後まで聞く
話を遮らずに最後まで聞くこともコミュニケーション能力の高い人の特徴と言えます。傾聴姿勢のできている人は、相手の話を最後まで聞くものです。
よく話す人の中には、コミュニケーション能力が一見高そうに見えても、話の流れで「自分はこうです」「あの人はこうでした」といったように自分の話に持っていく人は、自分の話に持っていっているだけで、相手の話しやすさを考えているとは言い難く、コミュニケーション能力が高いとは言えないでしょう。
相手が伝えたいこととは何か、その話を膨らませることができる人が、コミュニケーション能力の高い人と言えます。
適切なタイミングで質問し、相手の言いたいことを引き出す
相手の話を遮るように質問するのではなく、先述したように相手が伝えたいことは何かを考えた上で、話が膨らむような質問ができる人もコミュニケーション能力が高い人と言えます。
質問のタイミングを適切に見極め、相手が話しやすいようにすることで、言いたいことを引き出すことが可能です。しかし、質問が的外れだった場合、自分の話に興味がないのかと不安になってしまうこともあるため注意しましょう。
「PREP法」とは、自分が話し手となった際に、コミュニケーションをとる相手に対して、分かりやすく情報内容を伝えるために有効な話の構成手法の1つを指しています。
PREP法の要素と話を構成する際の順序は次の通りです。「お掃除ロボットを自宅に導入したい」という話を例に確認してみましょう。
①Point:話の要点や結論を伝える
(例文:「お掃除ロボットを家に導入しようと思っています」)
②Readon:要点や結論を挙げる理由を話す
(例文:「夫婦がお互いに働いていて、掃除する時間がなかなかとれないからです」)
③Example:具体例・事例を挙げる
(例文:「掃除にかける時間を最小限にすることで、夫婦の時間や趣味の時間が多くなります」)
④Point:話の最後に、話の要点や結論を再び伝える
(例文:「このような理由から、お掃除ロボットを導入することを提案します」)
PREP法は、聞き手(受け手)がほしいと考える重要性の高い情報がきちんと整理された構成であり、すぐに理解してもらえるというメリットがあります。特に仕事において報告書やメールで文章を書くときなど、ビジネスシーンで活躍する手法であるため、社会人として身に付けたい手法の一つです。
コミュニケーション能力の高い人の特徴に話し手のことを否定しないことも挙げられます。物事の考え方や捉え方は人それぞれであるため、自分と異なるものであることを知っておくことが大切です。
もしも、相手の話に対して否定的な態度を取ったり、それは違うといったように否定的な意見をぶつけたりすると、相手も良い気分ではなくなるものでしょう。特に交流がまだ浅い人に対して、そのような行動を取るのは得策ではありません。
自分の意見を伝えたいときは、否定的な表現を用いるのではなく、「自分はこういう風に考えている」と言ったように、一意見を伝えるように工夫することで、お互いの考え方を共有することができます。お互いを尊重したコミュニケーションが取れることで、今後の付き合いにも発展するものであるため、気を付けていきたいものです。
表情でコミュニケーションを取れる人、つまりは表情が豊かな人もコミュニケーション能力が高いと言えます。表情が豊かであると、自分の気持ちや相手の話に対しての感情がより相手に伝わりやすくなります。
相手の話に対して感じたものが表情で伝わることで、気持ち良く話すことができ、お互いの信頼関係も構築されやすいものである
以上のように紹介してきましたが、気持ちの浮き沈みが少ない人や常に冷静で表情豊かでない人でも、その他の傾聴姿勢が備わっていることでコミュニケーション能力が総合的に高い人と言うのはいるものです。
すべてできている人というのも少ないため、自分が取り入れやすいことから意識してみることが大切であると言えるでしょう。
コミュニケーション能力が高い人には、「ラポールスキル」「傾聴」「PREP法」を自然に発揮・活用しているということを紹介しました。しかし、コミュニケーション能力を高めるには、良い例だけでなく悪い例も知っておく必要性があります。
ここからは、コミュニケーションが不得手な人に見られる3つの特徴について解説します。自分のコミュニケーションの仕方や対人関係について振り返り、改善すべき要因を見つけましょう。
コミュニケーションが苦手な人の特徴の1つに、会話が一方的で自己中心的であることがあげられます。
コミュニケーションの最大の目的は、話題や気持ちなどを相互に伝えあい共有することです。一方的な発言や、相手の話を途中で遮ることなど、自己中心的な言動はコミュニケーションとはいえません。
コミュニケーション能力を高めたい人は、「聞くこと:話すこと=7:3」といった配分で、相手の話や意見をよく聞いて反応を示すようにしましょう。
距離感が不適切であることは、コミュニケーションが不得手な人の特徴の1つです。まず、「相手との関係性による会話的な距離」について見てみましょう。あまり親しくない相手に親友のように話しかけられた場合、不気味に感じる人が多いのではないでしょうか。相手との関係性の深さに応じて関わり方を変え、適切なコミュニケーションをとりましょう。
また、物理的な距離(パーソナルスペース)を守ることも大切です。パーソナルスペースは、相手との関係性に応じて異なります。以下にあげる基本的な距離を目安にしてください。
また、相手の性別もパーソナルスペースの広さに影響する条件です。自分が男性で相手が女性といった異性を相手にする場合、上記にあげた距離よりもやや大きく距離をとると良いでしょう。
人として生きる上で、プライドは失ってはならない大切なものです。しかし、プライドが高すぎることが、良好なコミュニケーションを阻害していることもあるため注意しましょう。否定的な発言や他者を見下す態度が多いと、周囲の人が徐々に離れていくことも考えられます。
否定的な発言や人を見下す態度は無意識に行っていることも多いため、まずは自分自身の会話内容について客観的に評価し、相手を尊重した言動を心がけましょう。
ここまで紹介した内容から、コミュニケーション能力には「受け手としてのコミュニケーション能力」と「話し手としてのコミュニケーション能力」の2つが存在することをなんとなく感じている方もいらっしゃることでしょう。
コミュニケーション能力を高めるためには基本的に実践あるのみです。こちらでは2つの鍛え方についてご紹介していきます。
受け手としてのコミュニケーション能力は何と言っても「傾聴姿勢」であると言えます。
紹介したコミュニケーション能力の高い人の特徴の中から、自分ができているもの、できていないものをチェックして、把握することから始めることが大切です。できていないものを洗い出し、自分に身に付きやすいものや比較的簡単と感じるものから取り組んでいくことで、成功体験を得ながら進めることができるため、継続性も高まるものであると言えるでしょう。
話し手に回る際に気を付けておきたいのが、話す内容が相手にとって基礎知識のあることであるかどうかです。あまり馴染みのない話の場合、聞いていてもわからず、退屈だと感じてしまうこともあるでしょう。
また、大枠は知っていても詳しくは知らないため、専門用語や業界ネタが話に濃くでてしまうと、聞き手は快く話を聞きとれないものです。誰にでも同じように話すのではなく、言葉や単語を相手がわかるように工夫して話すことも話し手としてのコミュニケーションには必要です。
また、相手が話を理解しやすいようにするためには、先述したPREP法を身につけることもおすすめです。話の要点や結論を伝え、要点や結論を挙げる理由を話し、具体例・事例を挙げ、最後に話の要点や結論を再び伝えるPREP法は、自分の意見を伝えるための構成をしっかりとイメージできることがポイントです。
何を伝えたいのかが明確になることで、相手は話を理解しやすくなり、わからないことや興味を持って聞きたいことなど、質問も積極的にしてもらいやすくなります。これができていないと、話を理解するための質問ばかりになって、自分自身話すのが億劫になりかねないため、相手が聞き取りやすい構成をイメージできるようにすることが大切です。
PREP法を身につけるためには、これらを意識することが大切ですが、最初は目的や結論から話すように意識してみることから始めてみましょう。慣れてきたら、聞き手がよりイメージしやすいように事例や具体例を含めるようにするなど、段階的に練習することで継続もしやすくなります。
「こういう人になりたい」といった目標があるように、「この人の話し方」「この人の聞く姿勢」を取り入れたいと思える手本となる人を見つけることは、コミュニケーション能力を高める近道であると言えます。この方法は、ミラーリングやペーシングなどの手法と同じで、受け手・話し手関係なくおすすめです。
本をはじめ、WEBサイトや動画で調べたり、講習会に参加したりと、コミュニケーション能力を高めるための方法は幅広いところで紹介されていますが、方針はそれぞれで自分に合っているのかもわからないものです。自分が尊敬する人の真似をすることから始めると、不要な知識も入らずに近づいていくことができるため、いろいろな方法を試したけど身につかないと言う人は試してみてはいかがでしょうか。
コミュニケーションが得意な人・苦手な人の特徴を踏まえ、日常でのコミュニケーションに活かすことができれば、コミュニケーションのとり方も上達していくと考えられます。
ただし、日常生活にコミュニケーション能力向上のためのトレーニングを取り入れ、十分に行うことは難しいでしょう。
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今回は、コミュニケーション能力が高い人・不得手な人のそれぞれの特徴について紹介しました。「ラポールスキル」「傾聴」「PREP法」といったスキルを身に付け、適切な距離感と相手を尊敬し思いやる心を持てば、コミュニケーショの質も向上するでしょう。
ただし、これらを実践するためには相応の学習とトレーニングが必要です。コミュニケーション能力を向上させるには、「受け手としてのコミュニケーション能力」と「話し手としてのコミュニケーション能力」について知り、それぞれを鍛える方法を実践することが大切です。
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